妹の形見分け     2013年6月23日にブログに書いた前編 後編をまとめたもの


先月、妹のだんな様だった人が亡くなった。

母がその知らせを聞いたのが、諸事情で、葬儀の後だったため

先日、ダンさんと私、そして母の三人で自宅にお参りに伺った。

一人暮らしだったため、遺品は全て処分するという。

何か欲しいものがあったら、持って行ってくださいと言われたけれど

雑然としたその家の中を家捜しする気もなく

かといって、母としたら、あの時、結局「形見分け」をしてもらう機会がないまま

時が過ぎてしまったので

妹が住んでいたこの空間の全てがなくなると思えば、

何でもいいから欲しいと思ったらしい。

それで

母が妹に贈った漆塗りのお椀揃えを、なんとか探して持って帰った。





私は、本当は、「もしもあったら手にとりたいもの」が


ふたつ、あった。


あったけれど、行く前から諦めていた。

あの雑然とした部屋の中で見つけることは到底不可能だから。



ひとつは・・・



妹の日記。

独身の時の日記。

私も妹も当時、ずっと日記をつけていた。


いつごろのことだったっけ・・・

二人で話しているときに、約束したことがある。

うんと若い頃だ。


「二人のどちらかが死んだら、残っているほうが、相手の日記を読まないで処分すること」

お互いが相手を信頼して託した「遺言」だ。


だけど

私は・・その約束を実行できなかった。


日記がどこにあるか、遺族に聞くことさえできなかった。

でも、きっと家の中のどこかにあったはず。

でも、探して、「捨てるから私に渡して」・・と残念ながら言える機会もなかったし

もしも日記の存在を知られたら、それは妹が一番嫌がる結果になったかもしれないから

話題にもできなかった。そして時間が流れた。


今回「形見分け」らしき言葉を聞いて

久しぶりにその事を思い出す機会は与えられたけれど

約束を守れなかった情けない自分を改めて責める以外、なんの役にも立たなかった。


それでも、悶々と考えているうちに、自分に都合の良い解釈に辿りついた。


この家の全てのものは、たぶん業者によって処分するだろう。

「遺品整理」という形ではなくて「処分」という形で。

全て「処分」してくれるという事は

私が処分しなければならなかったものも処分してくれるはずだ。

そう思うことにしよう・・


そして、二つ目の「あったら手にとりたかったもの」

それは、思わぬところにあった。 


///////////////////

私が欲しかったもう一つのもの。

それは一本の「カセットテープ」だった。


それは処分したいのではなくて、本当に形見分けとして欲しかったもの。


二人だけの姉妹だった私たちは

よく私の部屋で、とりとめなくお喋りをしていた。

なぜかいつも、妹の部屋ではなく私の部屋だったな。

あるとき

若いときのこういうお喋りって、録音しておいたら

きっといい思い出になって面白いんじゃない?ということになって

妹が部屋からカセットを持ってきて、その前でのお喋りになった。


最初は多少緊張していた二人だったけれど

そのうち、本当にリラックスして、実に他愛ないお喋りに無中になって・・

そのうち二人で「ムーミンの歌」なんぞ歌ったり・・・


その後、よくそのカセットを再生して

その内容のくだらなさと楽しさに二人でお腹を抱えて笑ったっけ・・

これは絶対に、二人が年を取って聞いたら、可笑しいよね・・

そう確信していた。

二人の宝物になるはずだった。



妹が結婚したときも、勿論、それは持って行った。

妹の家で、そのカセットテープを聴いたこともあった。

もう、ずっとずっと昔だけど。




妹が住んでいたその家の中を

今更

家捜しのようなことをする気も無く、できたとしても、その雑然とした中で

小さなカセットテープが見つかる奇跡などあろうはずもなく・・

とうに諦めていたものなのだからと・・




帰宅途中の車の中で

私は母にさりげなく、そのカセットテープの話をした。


すると

母が思わぬことを言った。

「カセット?それ、もしかしてウチにあるかもしれない」


え?まさか・・だって、妹は結婚してからも持っていたもの。


母は「でも、なんかアナタと喋った・・とか、

あの子(妹)の字で書いてあった気がするけど」


母が言うに



昨年、父が亡くなってから、家のリフォームを始める前

潔いほどの「断捨離」・・・大整理を敢行した際

どこからか出てきたというのだ。

特に何を思ったワケでは無いけれど、妹の字が書いてあったので

一応取っておいたという事だ。

母に言われても

私はまだ「まさか」という思いで半信半疑。


母も果たして、それが、私の言うところの「大切なテープ^」かどうか

イマイチ確信が持てず半信半疑。


家に帰ってから

そのテープを「これなんだけど」と持ってきた。


これ!!

そう!これ!

横浜の実家にあったなんて・・

一体、いつ、妹が実家に持ってきたのかはわからない。

母も預かった覚えも無いし、私も聞いていない。


だけど、それは確かに実家に戻ってきて

そして

昨年、偶然母が見つけて取っておき、

そして私の話で思い出してくれ・・

今、私の手元にある。



カセットには妹の字が両面に書かれてあった。

私は忘れていたが

初めてカセットで吹き込んだ二年後に

もう一度、二人の会話をB面に吹き込んだのだ。


A面には

「S50・8.18(月)夜
〇〇(私の名前)ちゃんの部屋で
二人でくだらないおしゃべりをしたとき・・。いい思い出になると思う。」


B面には

「S52.9.9(金)夜
あれから2年後、また記念にと二人でおしゃべりしています。成長したかな?」




まだテープが生きてるかどうか・・

聴いて無いからわかりません


あんなに手にしたかったカセットテープ

聴くかどうかわからない

私がちゃんと冷静に、まともに聴くことができるか

今は自信ないから。







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