乳頭温泉 鶴の湯
       19年6月下旬
                                
実は、乳頭温泉鶴の湯は
以前は「絶対泊まりたい温泉」であったけれど
最近では「そうでもない温泉」になっていた。

それは一口に言えば、私達がへそ曲がりであるから・・かも。
人気がありすぎて、マスコミでもてはやされ過ぎて
もはや泊まっても「新しい発見」がなさそうに見えたから。

それでは何故、鶴の湯に泊まったか?
それはやっぱり、へそ曲がりの裏にあるミーハーな気持ちかな。
乳頭温泉郷の湯めぐりを済ませて
宿に到着すると、さっきまで中庭にいた、たくさんの立ち寄り客が居なくなって
静かな鶴の湯になっていた。
鶴の湯はあまりに有名になりすぎて
その観光客の多さや、
時には「見物客」のマナー不足なども
耳に入ってきていた。
それだけに
多少の覚悟は持ち、
期待感は持たず、
だったけれど
この独特な風景をナマで観て
その風景の中に自分を置いてみると、
それだけで2人とも満たされた気持ちで
イッパイになって
これからの一泊二日の「鶴の湯」に
大きな期待を持ったのも、また正直な気持ち。
そう、この宿は、ワクワクドキドキの「鶴の湯ワールド」
一歩足を踏み入れてしまったら
なんの説明も要らない。
誰だって夢中になってしまう。
今宵の部屋は新本陣三番。
「本陣」を希望したのだけれど既に満室。

でもやっぱり「本陣」も魅力的。この次は「本陣」だね
この部屋は 8畳ほどの大きさの純和室。古いけれど掃除は行き届いてる。
冷蔵庫はないので、飲み物は宿の中の自動販売機でね。
この部屋にはテレビも無い。
でも、温泉と、この宿の雰囲気を堪能するのに忙しくて
テレビなんて要らない。
テレビは無いけど
トイレと洗面台は付いている。
鶴の湯ではちょっとした贅沢な部屋なのかも。
最近は鄙びた温泉に惹かれているので、洗面台がなくちゃ嫌だ、なんて
言っていられなくなったけれど、あればやっぱり嬉しい。
たとえ、名ばかりの洗面台であってもね。
鶴の湯で過ごした殆どが
温泉だったことは当然といえば当然。
その模様は別ページでゆっくり思い出すことにして
ここでは
食事の記憶など辿ってみようか。
部屋食。
時間になると従業員さんが来てテーブルを片付ける。
そして一の膳、二の膳を並べる。
山の田舎料理なので、私達には特に珍しいものもない。
長野の人間が、山方面の鄙びた温泉に行くのだから
それは仕方ないことかな。
後から出てきた熱々の筍のフライ。
珍しいね、天麩羅じゃなくてフライ。
意外に衣と合って美味しかった。
これは紹介番組で必ず出る「山芋鍋」
ここの名物だそうで
実際口にするまでは
「鍋なんか・・しかもお芋の・・」と思っていた。

が!一口食べてみて
本気でウマい!

なんでだろう?たががお芋の鍋なのに・・

団子状にしたお芋が口に入った途端
2人で目を丸くした。


この芋鍋のインパクトが強くて、
他のメニューはどうでもいいくらいに
満足な印象の食事となった。


やっぱり食事は、たとえ一品でも
自己主張するメニューが有ると無いとでは
全然違う。
お腹も満たされて部屋で一休みしていると
若いスラリとした男性従業員が。聞くと30台半ばだそう。
布団をてきぱきと敷きながら
さりげなく話題を提供して客の相手をしてくれるのが、うまい。

私達がいろいろな温泉を廻っていることから始まって
乳頭温泉や鶴の湯の話題になる。
忙しいだろうに
たくさんの話をして楽しませてくれた。

彼はこの鶴の湯を心から愛している。
「もしかして若旦那?」と思ったくらいに
鶴の湯や乳頭温泉郷全体の将来を考えていた。

軽い東北訛りも耳に心地よく、また彼の気概も頼もしかった。
彼と話せただけで、ここに泊まった甲斐があったと思った。

「鶴の湯の温泉に入った回数だけは誰にも負けないス」

東北訛りで誇らしげに言った彼の笑顔を今も思い出す。
朝食は広間でいただく。

熱々御飯とお味噌汁を並べて「いただきま〜す」
簡素だけれど美味しい、いかにも「朝ごはん」
食事処は何箇所かに分かれているようだけれど
この広間も平日だというのにイッパイ。
みな、一様に良い顔をしているのが
印象的だった。

きっと温泉三昧して
見も心も満たされているのだろう。
朝食が済むと、嫌でもチェックアウトの時間が近づいてくる。
名残を惜しみながら帰り支度をする。
居心地が良すぎた分、帰り支度が億劫でもある。
帰りたくないなあ・・と思うのは満足した証拠。
後ろ髪引かれるのは、いい宿だった証。

でも今回はこれで旅が終るのではないから。
まだもう一泊と立ち寄り温泉が待っているから。

外は生憎の雨だったけれど
次の宿に思いを馳せて鶴の湯を後にする。


いい宿でした。
きてよかった。

フロントで会計を済ませた学生風の若い男性。
満足そうにこう言った。

「ありがとう!また来ます」

おまけ
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鶴の湯
014-1204秋田県仙北市田沢湖田沢字先達沢
Tel 0187-46-2139