木賊温泉 共同浴場

       17年10月中下旬
立ち寄り200円以上(寸志)
湯野上温泉新湯からは、
どこも寄らずに真っ直ぐ帰途に着くはずであった。
福島から長野までの道のりは長い。

旅館の部屋で地図を見ながらのダンさんの独り言、
「このまま高速で帰るのはつまらないな。
一般道をドライブしながら帰るのも悪くないな。。
となると、小豆、檜枝岐、新潟に入って栃尾(温泉ばっかり)経由かな。
おっ、トクサの近くを通るな


「え?トクサって・・あの木賊?」カミさんの目が急に輝く。
「え?うん、そうだよ・・あの木賊・・」
そのあとはもうカミさんが何も言わなくてもダンさんは判っていた。
「はいはい、寄れますよ。木賊温泉ね。」

というわけで、旅の最後に思いがけず立ち寄れた
「木賊温泉共同浴場」
「木賊」地区は静かな集落。
昔懐かしい「よろずや」風の商店や
小さな民宿が「並ぶ」というより「まばらに点在」している。
二人が訪れた時は、車や人の通りも殆ど無く
全体にひっそりとした印象。
邪魔にならないような路肩を探して車を停める。

「木賊温泉共同浴場」と書かれた看板を見つけ
矢印方向に歩いていく。
集落から川の方に細い坂道を下っていくと
川岸に簡素な建物があるのが見えた。

多分、あれだ。
一瞬「物置小屋」?
と思ってしまう外観。
入口に扉らしいものもなく
近づくと浴室(?)がよく見える。
入口にある「入湯料金箱」
ご協力お願いしますと書いてある。
200円以上というのは何処かに書いてあったんだっけ?
それともネットで既に調べてあったんだっけ?
年季を感じさせるペンキの剥げた料金箱に
チャリンと数枚の100円硬貨を投じて
浴室に足を踏み入れる。
と・・ダイレクトに湯舟が視界を直撃。
細長い「く」の字型の湯舟が真ん中で大きな岩に仕切られ、
二つに分かれた形になっている。


奧の湯舟には二人の男性が、談笑しながら入っていた。

扉の上に写っているのはカミさん?
多分、更衣の最中だろうが
妖怪の「一反もめん」みたいだ。
脱衣場は基本的には無し。
湯舟の目の前に棚があってそこで着替える。
ただ、女性にとっては嬉しいことに
入り口のすぐ横にやっと一人入れる
小さな脱衣場があった。
まあ、蜘蛛の巣があったり
お世辞にも綺麗とは言えないけれど
扉があるだけ有り難い。
奧の浴槽に二人の先客がいたので
手前の湯舟に入ることにする。
岩が真ん中にあるので隣の湯舟が気にならず
貸切り状態と同じ。
岩の影に入ってしまえば隣からも見えないから
二人はかなりリラックスして入っていられた。

しばらくすると隣の湯舟に入っていた二人が
出ることにしたらしく、目の前で着替え始めた。
(カミさんは)目をそらした方がいいかなあと思ったが

「こちらの湯舟の方が暖かいから気持ちいいですよ。
もう出ますからこちらにどうぞ」

と、アチラの方から
積極的に話しかけてくれたので、自然と話すことになる。
あちこちの温泉に行っている二人のようで
この木賊温泉も初めてではないらしい。

偶然、一人が長野出身で、しかもダンカミと同じ北信濃。
しばし、長野の温泉の話で盛り上がる。
嬉しいんだよね、同郷の人と旅先で出会うのって。
ましてや、大好きな温泉で出会うなんてたまりませんね。
先客が帰ったので奧の湯舟に移ってみる。
ほんとうだ、だいぶ湯の温度が違う。
どうやら源泉がこっちの湯舟に湧いていて
それを入口側の湯舟に引いているようだ。

確かに暖かくて気持ちいいが
最初に入ったほうがヌルクてダンカミ的かな。
こっちは長く入っていられない。
そう言えば、さっきの二人も
何度も湯舟の淵に座って涼んでいたっけ。

殿方はいいけれど、
女性はあまり堂々と涼むわけには行かないので
ずっと入りっ放しでいられるような温度がベスト。
再び手前の湯船に戻ってくつろぐ。
小屋の中の風呂なので
完全な露天風呂のような景観は望めない。
だが、こうして入っていると
目の前のコンクリートの土台も
小屋の木枠も
丸見えの脱衣棚も
全部が外の景色と相まって
目に優しく映る。
今は静かに流れている渓流
しかし実は、この川が増水して
共同浴場の湯小屋が流されるという事態に
何度も遭遇したそうだ。
そう言えば、湯小屋の影も形もない
「川岸の露天風呂」と化したこの温泉の画像を
どこかで見たことが。
流される度、壊される度
すぐに復旧されるのは、全国から集まる
「復旧支援」の義援金ゆえ。

二人が訪れたこの日も
まだ新しい湯小屋の天井付近に
ズラリと「支援者」の名前が並んでいた。

この共同浴場は
たくさんの人に支えられ、愛され、守られている。
一人一人の名前を見ていてそう思わずにはいられない。
いつまでも入っていたい気持ちを抑えて
さあ、そろそろ行くよ。
木賊温泉共同浴場を後にして、今度こそ本当に福島の旅は終わり。
たくさんのお湯と、たくさんの人情に身も心も暖まった旅だった。
まだまだこの旅が名残惜しくて、今、登ってきた坂道を振り返る。
共同浴場の鄙びた湯小屋が
「またいつでもおいで、福島へ」と言っているようだ。
「また来るね。福島に」
そう心で呟いて、また坂道を登る。

車に戻ったら・・あとは帰途のみ。
無事に長野に着くまで、
まだちょっと早いけれど、良い旅だったね。
ダンさんはカミさんに、カミさんはダンさんに
お互いに良い想い出をたくさん・・ありがとう・・
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