西山温泉 老沢温泉旅館

         17年10月下旬
立ち寄り400円
西山温泉には、幾つかの温泉宿が隣同士のように接近して点在している。
「中の湯」「滝の湯」「下の湯」など、
ネットで見た限り
どこも源泉掛け流しの鄙びた温泉で、静かにその良さを競っている。
ここは歩いて湯めぐりできる、滅多にないチャンスなんだけど
残念ながら「間髪あけずのハシゴ湯」はどうも苦手。

もともと一ヶ所マッタリ型なので、
まだ身体から湯気がでているのに
次から次へと慌ただしく温泉に入るのが、どうも肌に合わないのだ。
というか、体力的に自信が〜・・

それで折角の西山温泉であったが、
その中の一つだけを選んで入ろうと言うことになった。

それがこの「老沢温泉旅館」
西山温泉は温泉街というより小さな集落のようだった。
いくつかある温泉宿も、宿というより大きな農家のようで
「温泉」の看板がなければ通り過ぎてしまいそう。
「老沢温泉旅館」に到着した時も
目にしたものは二階に客用布団(だろうか)。
せいせいと真正面に干してあって「日常」が感じられるのどかな光景だった。

ダンさんが先に車から降りて「立ち寄り」が可能か聞くために玄関に入っていく。
すぐに出てきてカミさんに指でOKサイン。
温泉グッズを持って玄関に入ると、ちょうどこの宿の電話が鳴ったところで、
「あんらまあ、すぃばらく〜」から始まってシバシ長電話に待たされることに。

どうやら知り合いからの電話で
今度訪ねて来たいがいつがいいかと聞いてきてるようだ。
それを「何日は孫の何々があるから、お母さん(お嫁さん)居ないから」とか
「できたら何曜日に・・」とか言っている。

普通なら、立ち寄りと言えども、客がいるのに失礼だなと思う場面だけれど
このポカポカ天気の玄関先で、
心地よい福島弁を聞いているとなんだか怒る気にもならない。


しばらくすると、「じゃあ、ごめんなんしょ」(?)とかなんとか言って電話を切り
「すんませんでしたねえ」と、やっと笑顔でこちらに来る。
料金を払い、玄関先にある業務用の冷蔵庫の中のスポーツ飲料を
「これください、いくらですか」と言うと
「さてね・・いくらなんだろ。孫が買ってきて入れてたから・・あはは」と暢気。
ダンさんが「自動販売機だと150円ですよ。」というと
「じゃあ150円」と。
商売っ気はゼロだけど、田舎のオバアチャンって感じですこぶる好印象。
玄関を普通に靴を脱いで普通のお家にお邪魔する感覚で
お風呂がある方へ、廊下を歩いていく。
きのう立ち寄った「横向温泉中の湯旅館」も農家風だったけれど
こちらの方がずっと新しく綺麗になっていた。

最近はスッカリ慣れた、何処にでもある「温泉への階段」

ここも例外ではなかったが、まだ木も新しく最近作り直したかのよう。
壁一面に張ってあるのは何故か全部カレンダー。
広告付きのものばかりだから、貰ったものを全部貼っているのだろう。
でも何でだろう?


下に降りるとそこがもう直接脱衣所になっていた。
男女別でなく一つだけ。
ロッカーなど無くて棚と籠だけだが
既にそういう形態にはすっかり慣れてしまっている二人。
誰もいないという事に感謝して、浴室のガラス戸を開ける。
「わ・・」「お・・・」声が出る。
目に飛び込んできたのはこの湯舟。
ネットで初めて見たとき、
西山温泉で入る温泉はここ!と決めた湯舟。


板張りの壁にコンクリートむき出しの床。
それが妙にしっくりしていて、
長方形の三列にならんだ湯船と共に
独特な浴室の雰囲気を醸し出している。

それぞれの湯船は温度が違っていて、
カミさんの入っている湯舟が一番ぬるくてダンカミ向き。
手前がちょっと熱すぎるくらいの温度。
凝ってるのねえ・・と思ったら
それぞれの湯口から出る熱いお湯の量を
木片で調節してるだけだった。
で、勝手に木片をズラして湯口を広げたり、
狭めたりしながら温度調節してしまった。

ここも湯の花が真っ黒で
慣れてない人には気持ち悪いかなあ・・
でもこの「純粋な温泉の証拠」・・シアワセだよね。
初めてこの温泉を知った人は
さっきから気になってるでしょう。
正面の得体のしれない
扉というか幟(のぼり)みたいなもの。
硝子戸の向こうにあるのは何故か
「老沢温泉神社」
由来など、調べても行かなかったし、その後も調べず。

でも、もはや温泉を崇拝しつつあるダンカミには
この浴場+温泉神社の組み合わせが
ちっとも違和感なく思える。
ネットで画像を見て「ここにしよう!」と思ったのは
この不思議な「神社」の存在ゆえ・・と言ってもいい。


神社参拝(?)のため
硝子戸を開けようとしたけれど
鍵が掛って開かず・・当り前か。

で、硝子扉のこっちからお参りすることにする。
「いつまでも仲良く、楽しい温泉巡りができますように」
パン!パン!

扉が開かないから、お賽銭は差し上げられないけど
そこんところ、ヨロシクね。
内湯なのだけれど天井も高い上に
開口部も広く、閉塞感無し。
ナミナミと注がれる温泉が
少し身体を動かすとザザ〜っと
少し低くなっている窓方向に溢れ、
コンクリートをツヤツヤと濡らす。


ダンさんはすっかり気に入ってしまった。

雰囲気のある内湯って、
「露天」という名前だけのチャチな風呂より
インパクトがあって好きだなあ・・
このまま、ここに泊りたくなっちゃったよ・・
そうもイカンか。
滅多にない
温泉神社の前で記念撮影。

静かにタイマーセットして
そっとカミさんの隣に寄り
厳かにパチリ。
すっかり長居して、
身も心も洗われて宿の玄関にもどると
さっきはいなかった御主人が見送りに出てこられた。
駐車してあった車のナンバーを見たのだろう。
「長野からですか・・これはこれは遠いところを・・」
本当に驚いていた様子。
東京始め、全国から温泉好きが来るのだとは思うけれど
長野・・っていう響きが、この御主人にとっては
「遠路はるばる」に感じたのかなあ。
なんせ少し前まで「陸の孤島」だったからねえ。

この御主人も先ほどの「おばあちゃん」と同じ
とても穏やかで感じ良く、
さっきまで入っていたあの温泉の心地よさと相まって
やっぱり「泊ってみたい」と
後ろ髪引かれる思いで
きょうの宿泊先に向かう二人であった。
HPのトップへ 福島県河沼郡柳津町五畳敷老沢114
0241-43-2014